武田圭史氏の訃報に寄せて

代表・中村公彦です。
ちょっと個人的な思い出話をするのをお許しください。

「友人」が死んだ。
(一応、私は彼を「友人」と呼んでも許されると思う。)

「そうさく畑」主催の武田圭司氏が10月23日に亡くなったそうだ。
私と同じ歳だった(享年53歳)。
この訃報に、自分がこんなに動揺するとは思わなかった。

イワエもんこと岩田次夫が死んだ時は、長い闘病に付き合って覚悟は出来ていた。
でも、これは突然すぎる。

大切な夢を抱えたまま、誰よりも愛した猫たちを置き去りにして、
若くしてこの世を去った彼の無念が、鋭い棘のように心に刺さる。

「そうさく畑」は、コミティアより先に関西で活動を始めていた。
同じ創作系同人誌即売会を主催する立場で、思想的対立(笑)も無かったとは言わない。
若い頃は、似ているからこそ、相手との違いに敏感になりがちだ。

20数年前の話だが、飲み会で言い争いになって、彼を殴ったこともある。
とは言え、いかにも芝居がかって、おもむろに彼の眼鏡を外してから殴った。
殴り返してこなかったのは、彼が私より酒席の喧嘩に慣れていたからだろう。
そのまま二人して座って、酒を飲み続けた。
少なくとも殴るくらいに、私は彼を信頼していたのだ。

今となっては、それぞれの主催者としての性格・タイプが違うだけで、
その個性がイベントのカラーとなっただけのことかもしれない。
それもまたこの同人誌の世界の幅の広さ、懐の深さなのだと思う。

昨夏、彼がそれまでの勤めを辞めて、関西の田舎に帰るという時に、
親しい友人と3人で彼の馴染みの池袋の飲み屋で飲んだ。

その時の、私が渡した花束を持って、
満面の笑みでVサインをする彼の写真が手元にある。
いろいろなしがらみから解放されて、彼はとても嬉しそうだった。
全てはこれからのはずだったのに…。

志半ばで逝った友人のために、彼の好きだった日本酒で献杯をする。

BGMは河島英五の「酒と泪と男と女」。

コミティア実行委員会代表・中村公彦

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