サークルインタビュー FrontView

にしゅ〜にしゅうめ

エビス映造所で会いましょう。3
A5/108P/500円
職業…会社員
趣味…ゲーム・焚き火
コミティア歴…コミティア148から
https://nishu.me/

淡々とした日常のなかでふと訪れる、どうしようもなく心が揺れ動く時。そんな瞬間の表情を、にしゅ〜さんはシンプルな描線で最大限に引き出す。アニメーター出身というバックグラウンドも発揮しつつ様々な画風を駆使して描かれる作品は、青年マンガからBLまで実に幅広い。
実家は美容室。従業員として働いていた「お姉さん」に親しく接してもらい、大きな影響を受けたという。「お店のチラシやPOPを描いて貰ってたんですが、すごく絵が上手かったんです。それを真似していたのが、絵を描き始めたきっかけだったように思います」
高校の時は同級生とゲームの話題で楽しんだりする傍ら、アニメ業界を目指すようになる。「当時遊んでいたゲームはどれも思い出深いですが、劇中に手描きのアニメーションパートが流れる作品は特に記憶に強く残っています。その演出がまるでご褒美のようで、いつか自分も誰かにワクワクしてもらえるものを描きたいと思ったんです」。就職したアニメ会社での数年間は多忙を極めたが「ひたすら描くことで鍛えられました。絵を見せるうえでどこまで省略できるかという感覚だったり、絵コンテを切るようなやり方でコマ間の時間経過を表現したりという視点は、今のマンガ作りにも活きています」と、学んだことも多かった。
アニメの仕事を辞めた後は趣味で二次創作をしていたが、とある出来事を発端にオリジナル作品に取り組み始めることになる。「編集者さんに『何かうちで描きませんか?』とお声掛けいただいたんですけど、何もアイディアが思い浮かばなくて。本当に悔しくて、思い付いた物語の題材をメモに書き溜めるようになりました」。成果が最初に実を結んだのが、24年のコミティア148で発表した『おさげを解くとき』。いつも明るい小学生・みよちゃんの家庭環境を同級生の目線から優しく描く同作を皮切りに『はものども』『In The Vault?』といった短編を相次いで発表した。
その一方で「コミティアに申し込む前から描きたいと思っていた」と語るのが、とあるアニメ制作会社を舞台にした『エビス映造所で会いましょう。』(既刊3巻)。アニメーターの猪島と、なぜか彼に想いを寄せる制作進行・鹿野の2人を中心とする、「自分の『萌え』を入れ込んだ」というBL作品だ。個性豊かなスタッフたちによる人間関係、現場のリアルな風景が好評を博している。「作品全体で『好き』というテーマを表現したいと思っています。恋愛と、アニメの仕事に対する愛情が一緒に伝われば嬉しいです」。描き始めた段階で既に結末は決めているそうだ。「まずは『エビス映造所〜』を最後まで描き切ることが目標」と意欲を燃やす。
身近な喜怒哀楽を丁寧に織り上げ、作品へと昇華させるにしゅ〜さん。その評価は「コミティアではジャンルにとらわれず作品を手に取っていただけて、本当にありがたいです」という言葉にも表れている。あなたもぜひ、自分の心に刺さる場面を見つけてほしい。

TEXT / HIROYUKI KUROSU ティアズマガジン155に収録

やまくじらずんどこ商会

六月晦日
A5/54P/700円
職業…漫画家
趣味…読書、実話怪談の聞き流し
コミティア歴…コミティア112から
https://x.com/yama9jira

怪談や幽霊、妖怪を扱いながらもホラーとは一線を画す、ジュブナイルなストーリー。可愛らしい絵柄でありつつ、緻密に描き込まれた画。やまくじらさんの作品の核には、世界の仕組みを探求する民俗学的な視線がある。
転勤族の家庭で育ち、幼少期は何度も引っ越しを重ねた。なかでも江の島近くの暮らしが記憶に濃い。校庭の裏が墓地という小学校では怪談が流行し、怪奇現象の噂が日常を満たしていた。もう一つの原風景は、祖母が暮らす岩手の山奥だ。夏休みに長期滞在することも多く、田舎の生活に強く惹かれていたという。
高校では歴史が得意で「文化史学科」のある大学に進学したが、思わぬ誤算があった。「歴史じゃなくて民俗学中心の学科だったんです」。民俗学とは、地域に根づく習俗や口承などを手がかりに、人の暮らしと土地との関係を読み解く学問である。「でも実は、私のやりたいことそのものだったんです。その時に学んだことは作品の血肉になっています」
在学中には『週刊少年ジャンプ』への持ち込みにも挑戦。反応自体は悪くなかったのだが、「ダメだった」と思い込み自信を失う。その感覚は就職後も尾を引き、「もっとすごいものを描かなくてはいけないって気持ちが強くなりすぎて、何年もずっと話をまとめられなかった」という。
転機になったのは13年、SNSでの交流をきっかけに、日本の神様をテーマにしたアンソロジーに参加したこと。「自信はなかったんですけど、もう自分の好きなものをと思ってギャグを描いてみたら、意外とするっと描けたんです」
コミティアを知ったのもその頃で、合同誌寄稿などを経て15年に初サークル参加。サークル名「ずんどこ商会」には、気負いすぎて描けなくなった経験から「バカバカしい名前にして気軽に描きたい」という想いを込めた。
21年より実業之日本社のムック『THE FORWARD』で連載した『かくりよの千日雛』は、コミティアがきっかけとなった仕事でもある。同作は単著として初の単行本でもあり、「最初から全6話と決まっていたので、物語が綺麗な円になって終わることを目指しました。拙いながらも最後まで描き上げられたことは大きな経験です」と語る。
同作の連載終了後の23年より、19年以降休んでいたコミティア参加を再開。現在は参加者との交流も楽しみつつ、作品をハイペースで発表し続けている。そこには「幽霊の怪談はなぜ存在するのか、世界がどう成り立っているのか、自由研究を発表する」ような研究者的な感覚もあるという。「私はずっと、自分のために漫画を描いているのかもしれないです。いちばん作品を読みたいのは自分だから」
目指すのは「一流のストーリーテラー」。子どものころから断片的に浮かんだ物語や、ふとした瞬間に閃いた設定をノートやメモに書き留める習慣があり、描きたいものは山ほどある。「真円」を目標に描き続けられるその輪は、確実に広がっている。

TEXT / KENJI NAKAYAMA ティアズマガジン155に収録

ペルPELL

ペルル
~ペルルと魔法のインソールの巻~
A5/16P/200円
職業…漫画家
趣味…ライブ鑑賞、散歩
コミティア歴…コミティア62から
https://x.com/P_E_L_L

女の子同士のゆるふわな百合的導入を裏切るかのように、突如乱入してくるコワモテのならず者やクリーチャー…!? それらが混然一体となった作風のペルさん。
同人誌即売会デビューはコミティアで、「漫画家のTAGROさんや小田扉さんがサークル参加している同人誌即売会があると知り、一般で参加しました」。サークル初参加は02年秋のコミティア62。初回にしてコピー本20冊がほぼ完売した成功体験もあり、サークル参加はしばらく続いたそうだ。
出身は東北。「実家には母親の趣味でハヤカワ文庫SFが揃っていたり、父親が好きなアメリカ映画のビデオやレコードがありました」。
影響を受けた作家は藤子不二雄、水木しげる、そしてジョージ秋山。地方でも都会同様に流通していた漫画でそのセンスは磨かれていく。しかし、深夜アニメが一年遅れで早朝に放送していたりと飢餓感を感じてもいた。「大学進学の動機は、上京してオタク系イベントに行きたいというのと、インターネットし放題になるからですね。時間をただ浪費していました」
そんな怠惰な大学生活を送るなか、アニメ『マインド・ゲーム』を観て、そのテーマや映像表現が刺さってクライマックスで号泣。その影響もあり、映像系の会社に就職する。そして社会人生活も落ち着いたころに二次創作ジャンルにハマって同人活動を再開。共にサークル活動する友人、知り合いもできた。「即売会ってお祭りとして楽しいんですよね。みんなでこの場をつくっているんだなと奮起させられます」
商業デビューのきっかけは、22年にコミティア141で頒布した『DIRTY DANGER DAMNED CITY』を講談社の「ヤンマガ月間新人漫画賞」に応募したこと。「LINEでPDFを送るだけでOKという投稿ハードルの低さに惹かれたんです。送ったら期待賞をいただきました」。以後『ヤンマガWeb』で読み切り掲載を経て、24年から25年3月までは初連載となる『やさしくない奴全員殺す』を週刊で描き続けた。完結後の次回作も鋭意構想中だ。
作品について「ふとした表情やコマ間からにじみ出る〝おもしろみ〟を目指して描いています」と語る。インパクトのある大ゴマや癖の強いキャラに目が行くが、一コマ毎に仕込まれた細かいネタの数々が濃度が高く、時に狂気に溢れたその楽しさを底上げする。「『ワッ!』って読者をびっくりさせたい。お笑いコントを作っている感覚です」
あくまで創作活動はマイペース。「自分は具体的にこれを描きたいっていうのが、常に湧き出てくるタイプじゃないんです。大事にしているのはダラダラ~と長く活動を続けること。傑作じゃなくても一作ごとに何かしら自分でうまくいったなと思える表現が描ければいいじゃないですか」 と語る。そんなペルさんが密かに抱いている夢は作品の映像化だ。「もともと映画好きで、映画を作りたいって思ってましたから、万が一映像化したらゴールかな(笑)」

TEXT / TAKUYA SAKAMOTO ティアズマガジン155に収録

川西ノブヒロ陸離

花には水を、
あなたにはメイドカフェを!
A5/36P/500円
職業…漫画家
趣味…女児アニメ鑑賞
コミティア歴…コミティア107から
http://kawanishinobuhiro.com

己の内に渦巻く欲望やプライドに苛まれながら、それでも日々を生き抜いていく人々。川西ノブヒロさんは、誰もが共感できるそんな姿を、コメディタッチでありながら人生と向き合う物語として描き出す。
姉の影響で少女漫画に親しみつつ、『ドラクエ4コママンガ劇場』に投稿する少年時代を過ごした。「可愛いもの」が好きな子供だったという。「男の自分が女の子を描くのは変じゃないかと親に相談したこともありました(笑)。こがわみさき先生の『陽だまりのピニュ』という少女漫画が好きだったのですが、学校でそういった話は中々できなかったです」
漫画家を目指して美大に進学し、漫研の活動で初めてコミティアに参加。部誌を見た編集者の誘いを機に、卒業後の08年に講談社の少年誌『月刊少年ライバル』で『機械少年メカボーイ』の連載を開始した。順風満帆なスタートだったが、翌年で打ち切り。「少年漫画の引き出しがなかったんです。プライベートでの恋愛も上手くいかず、20代は本当に苦しい時期でした」
日々のネガティブな気持ちを払拭するために13年頃から始めたのがSNSでのイラスト投稿。そこから生まれたネタをショート漫画集として14年のコミティア107から発表する中、心優しいなまはげの一篇が編集者の目に留まり『いい百鬼夜行』(講談社)の連載が始まる。「とにかく自分が救われたかったから、明るい話を描きたくて。読者の苦しみに寄り添うことが求められていると分かりました」
可愛く親しみやすい作風は人気を博したが、連載後は「自分に描けるものを出し切った」ことでモチベーションが尽きた。だが、作家仲間がハマっていた女児向けアイドルアニメ『アイカツ!』を見て人生が変わったという。「女の子がトップアイドルを目指す明るく悪意のない物語が自分を癒してくれたのは勿論、ストーリー全体の大枠を軸に、各話で起承転結を作る構成が話作りのヒントになったんです。シナリオの勉強や、色んな作品に触れる機会にも繋がりました」
この経験はコミティアで発表する作品にも影響を与えている。コミティア128で発表した『3のつく数字と3の倍数のコマで女同士がKISS』は、3コマごとに必ずキャラクターがキスをする一発ネタだが、話が進むにつれて2人の人生を描く壮大な物語へと導かれる。商業最新作『恋は忍耐』(集英社)や、コミティア152で発表の『女児向け筐体全身浴』では、かつて川西さんが苦しんだ恋愛や、夢中になったコンテンツへの執着をテーマとして真正面から描いた。「沈んでいた時期の自分や、今苦しんでいる人に物語が届いて欲しい気持ちがあります。失恋の経験も『アイカツ!』のアニメが終わったことも同じ。喪失感を抱えた人が立ち上がる様を描きたいです」
決して器用ではない人生を歩んできたと語る川西さん。まっすぐでピュアな作品に惹かれる読者が多いのも、その道のりがあってこそだろう。これから生み出される、等身大のキャラクターと物語も楽しみでならない。

TEXT / KOSUKE YAMASHITA ティアズマガジン155に収録