COMITIA111 ごあいさつ

31年目のコミティアにようこそ

昨年は怒涛の一年でした。
2月のコミティアでは、代表の私(中村公彦)の文化庁メディア芸術祭の功労賞受賞記念展示を行い、5月のコミティアからは30周年記念出版として「コミティア30thクロニクル」を、8月、11月と3冊連続刊行。11月のコミティアは、コミティアXの復活と海外マンガフェスタの併催、初めての秋のビッグサイト3ホール開催と、一年を通じてイベント盛り沢山で、本当に濃密な一年間でした。
中でもやはり大きかったのは『コミティア30thクロニクル』の出版です。作業自体も3年がかりで、製作過程でたくさんの過去の見本誌を読み返し、30年分の歴史をしみじみと振り返りました。また懐かしい人たちと連絡を取り合い、いまの日々の暮らしの話を聞き、当時の思い出話をして、旧交を温めることが出来ました。当り前の話ですが、描いた彼らも、そして読んだ私も、同じだけ往時から歳を取っているのです。
それでも当時の作品をいま新鮮な気持ちで読めるのは、そこにいつの時代も変わらない「人の営みと気持ち」が描かれているから。まさに「生きているマンガ」だからでしょう。だからこそ、生命力のある作品は、10年後20年後に読み返しても、読む側も年月を経た分また違った読み方が出来ることを実感しました。その魅力はきっと、初めて読む新しい読者にも伝わることと信じています。
コミティアの役割の一つは「読み継ぎ、語り継ぐ」ことです。基本的に部数の少ない同人誌は、限られた読者に頒布されて終わることが殆んどです。けれど、それが多くの人に薦めたい素晴らしい作品であれば、読んだ人の口伝いに広まり、再版を重ねたり、商業誌に掲載されて更に多くの読者に届くことも珍しくありません。自主出版だからこそ、読者も能動的に巻き込み、柔軟な手法で広げてゆける可能性もあるはずです。メディアとしてのコミティアはそのためのプラットフォームの役割も果たしたいと思います。
いまコミティアには、10代から60代まで、3世代の作家が入り混じって参加しています。迸る勢いも、円熟の味も、ひとところに集まる面白さ。それは歴史の財産であり、30年かけて培ってきたものです。
同世代・同指向だけの均質な集まりではなく、さまざまな趣味趣向や、技巧、経験などから生み出される表現の集合体は、一人一人の個性が相互に刺激され合うことで更に広く、深く、豊かになります。それこそが「創作」を指向するコミティアの目指すべき姿なのでしょう。
昨年、メディア芸術祭の功労賞をいただいた祝いの席で、同賞の先輩でもある元講談社『モーニング』創刊編集長の栗原良幸さんに言われました。「30年などで満足せず、100年を目指せ」と。その言葉を聞いて、ハッと眼が覚めたように感じました。メディアとしてのコミティアはそういう意識を持たないとならないのだ、と教えられたのです。
これまでただがむしゃらにやってきた30年でしたが、これからはまた新しい視座が必要となってくるでしょう。まだ具体的なイメージがある訳ではありませんが、31年目からのコミティアは、そんな意識で一歩づつ進んでゆきたいと思います。どうぞ、末永くお付合いください。

最後になりましたが本日は3440のサークル・個人の方が参加しています。今回は自主企画のない、基本に立ち返った展示即売会です。どうぞゆっくりじっくりと机の上の作品と対話してください。あなたにとっての新しい素敵な出会いがあることを願っています。

2015年2月1日 コミティア実行委員会代表 中村公彦