コミティア実行委員会代表・中村公彦 文化庁メディア芸術祭功労賞受賞のご報告

COMITIA107「大中村展」にて記念の寄せ描き
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功労賞 贈賞理由
例えば本芸術祭で過去に受賞された武富健治、白井弓子、こうの史代、岩岡ヒサエ、西村ツチカ、おざわゆき、田中相ら各氏。彼らがすべて「商業誌出身者」ではなく、中村公彦氏主催の「自主制作漫画同人誌即売会・コミティア(COMITIA)」で育ち巣立った作家たちである、と述べるだけで、中村氏が本賞を受賞される理由は充分であろう。先行同人誌即売会「コミックマーケット」と一線を画し、あくまで「創作」にこだわって30年、氏が日本のマンガ界に貢献、底上げしてきた功績には計り知れないものがあり、今回の功労賞受賞に輝いた。

みなもと 太郎(漫画家/マンガ研究家)

中村公彦よりの答辞
最初に受賞の連絡をいただいた時、これほど驚き、狼狽したのは初めてだったかもしれません。この度、コミティア実行委員会代表として、文化庁メディア芸術祭の功労賞を受賞しました。これまでお引き立ていただいた皆様に、あらためて心より御礼を申し上げます。 ご存知の方も多いでしょうが、以前にこの賞を受賞されているのが、小長井信昌さん(白泉社の創業者)、栗原良幸さん(コミックモーニングの創刊編集長)、山本順也さん(元別冊少女コミック編集長/少女漫画24年組を育てた方)という、私自身も深く敬愛する方々ですので、そこに並ぶのは身が竦む思いです。 正直、自分で良いのか?と戸惑う気持ちは未だにあります。しかし、これまでのコミティアの30年間の活動を評価して貰えたのは何より嬉しいことですし、その運営姿勢に 「みんなで作るコミティア」を掲げてきたのですから、この賞も参加者みんなで受賞したのだと思います。…ということで、ぜひみんなで受賞を祝いましょう。 そしてこの、マンガが大きな地殻変動を迎える時代に、初めて同人誌の世界の人間が受賞するのも、何かを象徴するようです。それは同人誌という日本独自のメディアが世間に認められた証でしょうし、その果たすべき役割がますます問われるのだ、とも思います。 言ってしまうなら、これは賞を“先渡し”されたようなものかもしれません。私自身としては、これから自分のやるべき仕事を最後まで全うしてやっと、この賞を受け取る資格を得るように思います(やることはこれまでと変わりませんけれど)。そう肝に銘じて、まだまだ現役で頑張ります。そして何よりそれが、この同人誌即売会という新しいメディアを創り出し、導いてくれた先達への恩返しのつもりです。 最後にもう一度、心よりの感謝を込めて、どうも有難うございました。(2014.2.2.)
中村公彦プロフィール

受賞へのお祝いメッセージ

中村公彦さまはじめコミティア実行委員会の皆さま、そしてコミティア参加者の皆さま。この度はメディア芸術祭功労賞の贈賞おめでとうございます。 コミティア事務所2013年12月5日のブログにあった、「コミティア参加者のみんなで受賞したのだ」という言葉にとても感銘を受け、このように書かせていただきます。 私は、なぜか今、メディア芸術祭マンガ部門の選考委員をしています。それで知っているのですが、今回の贈賞は掛け値なしの満場一致でした。自分が選考委員をしていることには、いつも「ここにいていいのだろうか」と思っているのですが、今回の贈賞を決める場にいることができたことは、とても嬉しく誇らしいことでした。

(マンガ研究/米沢嘉博記念図書館スタッフ ヤマダトモコ)

中村さんとは、主にプロを目指す若手を対象にしたマンガ賞の審査で同席させて頂く機会が、幾度かありました。そこで中村さんは、作品の質もさることながら、そこに垣間見える若き描き手たちの将来の伸び代にひときわ重きを置き、時に他の審査員たちの向こうを張って作者の将来性を擁護されていたことが印象的でした。現在活躍するコミティア出身の作家たちの、同人時代からの軌跡を数多くご覧になってきた眼差しを、そこに感じました。その眼差しが、コミティアのすみずみまで注がれ、その類い希な場を支えているのだと思います。受賞おめでとうございます。

(明治大学 国際日本学部 准教授 森川嘉一郎)

文化庁メディア芸術祭の功労賞受賞おめでとうございます。いままでのどの受賞者よりもコミティア・中村さんがふさわしいと思います。私は漫画に関わって行くときに、国に(権威に)ほめられるようなものは作らないという気持ちがありました。コミティアの漫画はもっと広々としています。ほめられてもほめられなくても変わりのない豊かなものがいっぱいです。コミティアはいつも新作であふれていて、毎回が新しいスタートとなっています。30周年のいつにかわらぬ賑わいを楽しみにさせていただきます。

(マンガ編集者/第14回文化庁メディア芸術祭功労賞受賞 栗原良幸)

28年ぐらい前、同人誌界でC翼が大ブームだった頃、まだ『ぱふ』編集長だった中村氏は私に言った。
「なんでイベントのスタッフなんて続けられるの…?」
まさにその言葉をあなたに返す。
岩田・亜庭・米沢と、20〜30代の時にぶつかりあった仲間たちが同じく抱いていた夢…
「その先を見てみたい」
同人誌即売会は、誰かのモノでもあり、誰のモノでもない。でも、大変な目に逢い続ける誰かがいないと進まない場でもある。 「その先の景色」のために、これからもよろしく。

(コミックマーケット準備会 共同代表 筆谷芳行)

「コミティア」を描き手と読み手の出会いの「場」として育て上げ、自ら積極的に参加作家と触れ合うことで縁を深めてきた中村さんの真摯な姿勢こそが、「コミティア」から多くのプロ作家を生みだす土壌になっていったことは誰しもが認めるところでしょう。
そして、中村さんが地道に築き上げてきた参加作家との縁は、やがて大きな人の輪となり、今回の受賞に至ったのだと感じています。
中村さん、そしてコミティア実行委員会スタッフの皆さんに心よりお祝い申し上げます。

(ガタケット事務局 代表 坂田文彦)

中村様 第17回メディア芸術祭において功労賞おめでとうございます。FELICITATIONS!
漫画家たちとマンガの良さをずっと見守ってきたコミティアの中村様と一緒に、世界中のマンガ・アーティストを迎えるイベント「海外マンガフェスタ」をさせていただき、大変感謝しております。
二年前からコミティア内で真の国際交流ができたおかげで、マンガは境界のない世界というメッセージが日本にも届けられた気がします。 このようにこれからもマンガの発展とマンガの国際化に頑張ってください。
今後ともよろしくお願いいたします。

(海外マンガフェスタ実行委員長 フレデリック・トゥルモンド)

中村公彦さんおめでとうございます。コミティアの一歩一歩の努力が認められ、次代の文化に繋がる賞を受けられたのは栄えある事と思います。
中村氏はひたすら、小さな一歩を積み重ねて、大きな仕事を成し遂げるというタイプですが、その目標の柔軟性とマンガ愛とでここまでのイベントに築き上げて きたのだと思います。そして、後ろめたいことというのが苦手な氏は、できる限り正攻法でやって来ている。それもまた、成功の秘訣。しかし、「後ろめたくなく、正攻法で、柔軟」というのは、これは、中村氏だけがなしえた離れ業ではないかと思います。慎重な革命家。リアリストの夢想家。それは、自分の夢ではな く、みんなの夢を叶えたかったからではないかと思っています。中村氏が作り上げたコミティアは、だからこそしなやかな即売会になり得たのだと思います。そしてこれからもそう有り続けて欲しいと思っています。
中村さん、健康に気をつけて、コミティアがまだまだこれから、やらねばならないことを続けて行けるよう頑張って下さい。

(漫画家 belne)

思い出すのは、中村さんが『ぱふ』編集部を辞めてコミティアに専念しはじめた頃のこと。ご両親に「おまえのやってることがわからない」と言われると、こぼしてた。漫画家や編集者という職業はあっても、同人誌即売会の主宰者なんて職業はないのだから、わかってもらうのは無理だと笑ってた。そんな仕事を長く続けて大きくして、賞までもらってしまった中村さん、おめでとうございます! なんだか、とても痛快です。いまとなっては初期のほんの数年だったけど、スタッフとして関わってたことを自慢にしようと思います。もういい歳なので、お互い身体に気をつけて。これからもよろしく。

(漫画家 山川直人)

おめでとうございます! その大きな微笑でこれからもどんどん良い漫画を描く良い漫画家を産む良い場を育ててください!

(漫画家 しりあがり寿)

メディア芸術祭功労賞! ほんとうにおめでとうございます。
中村さんがなさっている事を考えましたら、受賞はあたりまえとも思いますが、しみじみうれしいです。
これからも漫画の事を愛していて下さい。
お体と奥さまを大切にして御活躍下さい。
あ、本当にちょっと泣きそうになっているふかみでした。
Congratulation!!

(漫画家 深見じゅん)

中村代表との出会いは、僕がまだ高校生だった30年前に遡ります。まんが情報誌『ぱふ』の常連投稿者だった僕に中村さんがかけてくれた「猪飼君がマンガについて書く文章、好きですよ」という言葉が、今にして思えば自分の人生を決めてしまいました(責任とって!)。その後『ぱふ』に入れていただき、中村編集長の下で編集のイロハを教えていただきました。「コミティアに専念したいから」と編集長の重責を押し付けられたことは恨んでいませんよ♡ 規模の大小にかかわらず大切な芯の部分を変えずにコミティアを続けてきたこと、それが何より尊いと僕は思います。中村さんも30年間、本当に変わらない。あの日、僕の背中を押して勇気をくださったように、今も様々な方の背中を押し続けてくれていますよね。本当におめでとうございます。我が事のように嬉しかったです!

(徳間書店 COMICリュウ副編集長 猪飼幹太)

中村さん、受賞おめでとうございます。マンガ同人誌のビッグバン直前から始まったコミティアも今年で30年。良きことが重なった記念すべき年となりましたね。そして、来年はかのコミケットも40周年を迎えます。数ある同人誌即売会の栄枯盛衰の中で、ここまで大きくなったコミケットとコミティアに共通するのは、「現実は見据えるが、掲げた理念はブレない」ということだと思います。米沢嘉博氏やコミケットの今の共同代表氏も、そして誰あろう中村さんも、他人の話を聞きはしますが、自分が決めた道を結局は歩んできた(笑)ところに今があるのだと思います。その意味では、中村後のコミティアはいささか気になるのですが、功労賞をもらったからと老け込んだりせずに、しばらくは、中村公彦の「コミティア」を続けて行ってください。

(マンガ評論家・同人誌研究家/同人誌生活文化総合研究所 三崎尚人)

中村さん、第17回メディア芸術祭功労賞受賞本当におめでとうございます。
コミティアは、若い頃熱心に参加していた昔のコミケの匂いがするというのが私の最初の印象でした。「創作」にこだわりがある人達が集まってワイワイがやがや、読み手と描き手がオリジナルな物語を基軸として結びつく、そんな熱い空間が続いている事は本当に凄いことです。創作を支援するという中村さんの揺らぎのない姿勢の下でコミティアは創作の揺籃装置でありつづけて来ました。また読み手にとっても作品を購入するのは当然としても見本誌読書会を通じて読書世界を広げることができました。どうかこれからもこのかけがえのない創作の場を守って発展させて下さい。

(東京工業大学総合理工学研究科 教授 出口弘)

功労賞の受賞、おめでとうございます! ジュンク堂書店の出張販売ブースは、今年で14年目を迎えます。そのきっかけはもちろん、これまで販売を続けてこられたのも、ひとえに中村さんとコミティアという場所の力あってのこと。そしてその力は、池袋本店コミックフロアの棚をも育ててくださいました。
私を含め歴代のスタッフは、コミティア参加者の方々が出版された本の販売を通じて、多くの事を経験してきました。それはもう本当に、数え切れぬほど! ですから、池袋本店コミックフロアの”色“の一つは「コミティア」です。そう胸を張って言い続けてきましたし、これからも言い続けたい。そのためには中村さん、私達も引き続き頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願い致します!

(ジュンク堂書店池袋本店コミックフロア 田中香織)

中村さん、この度のご受賞、おめでとうございます。功労っていう言葉がこんなにもしっくりくる受賞も少ないと思います。表彰されるべき人がされてほんとによかった。
歴史にもしもは禁物ですが、もし中村さんがいなかったら、と想像してみると、その影響力の甚大さがグワーと押し寄せてきて背筋が寒くなります。あのマンガもなければ今の仕事も自分のバンドもこの世に存在してないとこだった。あぶない、あぶない。
客として、サークルで、いまではショップとして出展させていただいていますが、設営から片付けまで、歩き回っては声をかけてらっしゃる中村さんのお姿はいつでも変わりません。自分はすぐ手を抜いたりしがちなので、中村さんのことを思い出して、俺ごときがさぼってる場合じゃないなーと反省しています。ほんとうの現場主義っていうのはたぶん中村さんのことを言うんだろうな、と思います。

(コミックナタリー編集長 唐木元)

おめでとうございます。もう20年ほどのおつきあいになりますでしょうか。自分と中村さんの年齢から20を差し引くと、その頃の若さに驚嘆してしまいます! 私は、ティアズマガジンの印刷を承る遥か以前、この稀有なカタログを拝見したその時から、コミティアさんの運営手法を敬意を持って見つめてまいりました。中村さんの発案が多いのでしょうが、「骨格がガッシリとした企画」だと思ってきたのです。その骨格とは、言わずもがな「作家を育てる」ということです。ティアズマガジンの編集方針がその通りですし、読書会、出張編集部、belneさんのワークショップなどなど、アイデアにも感嘆しますが、それ以上に志向性・思想性の鋭さに打たれてきたのです。今後は「育てる側の陣形を大きくすること」に尽力されることを祈っております。

(株式会社緑陽社 代表取締役 武川優)

中村さん、文化庁メディア芸術祭功労賞受賞おめでとうございます!
中村さんと親しくお話させていただくことになったのは、コミックマーケットの代表を長く務めていらした米沢嘉博さんの追悼のシンポジウムをコミティアで開催していただいた時だと思います。東京都青少年健全育成条例の時も、集会を池袋で開く時に、ミーティングの場所等、いろいろお世話になりました。ここ数年は、「海外マンガフェスタ」でもお世話になっております。授賞式の二次会で「10年後、20年後に『あの時、あげてよかった!』と言われるように」という言葉、心に刻みました。それ、私たちが一緒に造っていくべき道ですよね。今後とも、どうぞよろしくお願いします!

(藤本由香里/評論家・明治大学「漫画文化論」)