サークルインタビュー FrontView

はしゃ はしゃぐ。

『フリペ集6』
A4変型/16P/500円/その他
生年月日…1992年2月26日
職業…イラストレーター兼漫画家
趣味…絵を描くこと・旅行・読書・ご飯
コミティア歴…コミティア107から
http://hasya.nomaki.jp/
幼い頃から絵を描くのが大好き。家族みんなが漫画好きで、家には漫画があふれていた。小学校の文集に書いた将来の夢はイラストレーター。小中高とバスケ部だったが、絵を描いていたくて美大に進学した。
中学の頃から当時盛り上がっていたお絵描き掲示板に投稿していた。「インターネットの影響は大きいですね。同世代の子の作品に刺激を受けたり、コメントを貰ったりするのが楽しくて」ただ、漫画を描き始めたのも同人誌即売会を知ったのも大学に入ってから。「五十嵐大介さんがボールペンで描いているのを知って、画材は自由でいいんだ!って」それまでペンタブで描いていた線画をアナログで描くようになり、今の特徴的なペンタッチが生まれた。
2013年から続いているフリーペーパーは「暇つぶしに読んでもらえたら」と、大学の食堂に数枚置いたのがきっかけ。コンビニのネットプリントを利用し始め、SNSを経由して読者はみるみる増えていった。「昔からノートをまとめるのが好きだったんです。調べてわかりやすく絵を入れて…自由研究と学級新聞が混ざったような感じ」フリペで描いたフランス旅行記が好評で、トルコとドイツ・チェコの旅行記はそれぞれ同人誌として発行した。「友達の手紙や土産話みたいだってよく言われます。家族で読んでる等のコメントや、知らない人同士が私の作品をきっかけに盛り上がってくれているところを見かけると、とても感動します」と、嬉しそうに語ってくれた。
のほほんとマイペースだけれど、行動力に溢れたはしゃさんの地図はぐんぐん拡がっていきそうだ。昨年は同人誌で初となるストーリー漫画を発表。商業での漫画連載も始まり、旅先でもっと英語を話せるようにと、半年間のフィリピン語学留学も経験した。「描くことを続けたら良いものになると思うんです。私は読んでくれる人がいたから続けられた。待ってくれる人がいるなら描きたいものは無くなりません」次回のコミティアでの発行を目指して、160頁を越える留学記を執筆中。年内には商業コミックスの発売も予定している。それから、海外で暮らしてみたいという。
「日本にいても部屋にこもって描いている時間がほとんどなので、インターネットがあれば何処でも問題ないかなと…海外での生活の合間に、新しいことを学べたらと期待しています」キラキラ輝く好奇心旺盛な眼差しが、私たち読者をあらゆる世界への旅に連れて行ってくれるに違いない。

TEXT /AI AKITA ティアズマガジン119に収録

猫田博人 BARE FEET

『アザラシのいる生活
(再録版)』
A5/116P/800円
ファンタジー
生年月日…11月30日
職業…新人マンガ家
趣味…水族館にアザラシを見に行くこと、ライブ鑑賞、ハンドメイド
コミティア歴…2013年ごろから
http://bact.mistysky.net/
幻獣が宇宙を往き、アザラシが空を泳ぐ。猫田博人さんの作品は「ファンタジー」の一言では言い表せない独特の空想的な世界観を持つ。それを作るのは自身の「好きなもの」への一途な想いだ。
幼稚園の頃にクリスマスプレゼントでもらった『クレヨンしんちゃん』を読んでマンガ家を志した。小学生で同人誌即売会に参加し、会場で仲良くなった大人のお姉さんが作品を置かせてくれたりイベント参加のルールを教えてくれた。中学生では既にサークル参加やウェブサイトで作品を描いて発表し、反応をもらうサイクルの楽しさに目覚めていた。
高校卒業後はマンガの専門学校に進学。現在は新人マンガ家としてプロを目指している。商業媒体向けのマンガでも自身のこだわりは曲げない。「売れるものを目指すより、私が描いたもので読者に喜んでほしい」と信念を貫く生き様は、それゆえの苦心も多い。
商業デビューに向けた苦労の中で、同人のシリーズ作『プレアデスの両脚』は生まれた。地球と人間の再誕のために銀河の星々を巡り「星の記憶」を集める獣人と幻獣の話だ。「まずは好きなものを描いてみて、その後で膨らませられないか」と考え、敬愛するロックバンド・ACIDMANが歌う生と死の世界観を自分なりに描き起こした。見どころは過酷な星々で生存闘争を繰り広げる者と主人公の激情だ。自身の創作の根底にある「心のぶつかり合いを描きたい」という想いの通り、悔しさや怒り、そして祈りにも似た感情の叫びが鬼気迫り心震える。回を経る毎に物語、絵、キャラとも洗練させてきた本作は、それ自体が博人さんの闘いの証と言えるだろう。
もうひとつの短編連作『アザラシのいる生活』も大好きなアザラシから生まれた作品だ。怠惰の思念体たるアザラシが空を泳ぎ、ダラけたい人間のまわりに集まる日常世界。「無力そうな姿を小悪魔的な魅力で描きたい」と架空で自由な存在にした。アザラシの可愛さと対照的に、主人公たちが進路や仕事に向き合い悩む姿が胸を打つ。「どの読者も主人公の誰かに共感できるはず」と語る本作は、存在証明のためにがむしゃらに生きる者に向けられた人間賛歌だ。本作を出張編集部に持ち込んだことがきっかけで『ヤングマガジンサード』(講談社)でのデビューに至った。制作時は商業を意識していなかったと言うから、世の中何があるか分からない。
「好きなもの」からつかんだチャンスに「私自身のマンガの可能性がゼロでないなら挑みたい」と闘志を燃やす。その先の新たな世界が見られる日はきっとすぐそこだ。

TEXT / TAKASHI MENJO ティアズマガジン119に収録

雨森ひろこ 針子少女

『針子少女 4』
A5/84P/500円/少女
生年月日…4月7日
職業…人形衣装作家
趣味…音楽ライブ参戦、服
コミティア歴…コミティア107より
http://harikoshojo.blog.fc2.com/
「針子少女」の雨森ひろこさんは、1/6サイズの人形の世界で活躍するプロの人形衣装作家である。その肩書は、コミティアの中では異色に映るかも知れないが、学生の頃はプロの漫画家志望だったそうだ。「投稿や持込みをして、少女漫画誌に何度か読切が掲載されたこともありましたが、5年頑張っても結局芽が出なかったので諦めが付きました」。その後、趣味だった裁縫を本格的に仕事にするために個人ブランドを設立し、人形衣装の即売会で活動を開始。実績を積み重ね、企業からも依頼を受ける作家になった。しかし、仕事が軌道に乗り、心に余裕ができ始めた頃、「過去の漫画に対するトラウマや未練に決着を付けたい、と思うようになったんです」。心境の変化が、長いブランクを経て、再びペンを取る原動力になった。
雨森さんが発表を続ける『針子少女』シリーズは、高校生の少女たちの勇気と友情の物語だ。ロリィタファッションと人形をこよなく愛する主人公・山根ちやは、イジメられていた部活の仲間を庇ったばかりに逆に標的にされ、学校で制服を燃やされたり、他の女子たちから完全に無視されている。しかし、苦労の末、隠れロリィタファンの同級生・鹿野小夜子と友達になったのを機に、針子部を結成。裁縫という自己表現法でイジメと闘いながら、信じ合える仲間を見つけ出していく。「学生の頃にイジメられていた私自身の体験を元に、人の心を表現することをテーマに描き続けています」。陰湿なイジメに傷付き、他人とのコミュニケーションに悩みながらも、決して諦めない少女たちの繊細な内面描写と、主人公のエキセントリック、かつマーベラスな裁縫スキルが見所だ。また、少女だけでなく、個性的な少年たちも登場し、広がりを見せる物語にもぜひ注目して欲しい。
一昨年には、『針子少女』の第3話までを収録した同題の単行本が実業之日本社より発売された。コミティア出展を機に、図らずも「プロになりたい」というかつての夢を叶えた雨森さん。「遠回りしましたが、同人誌のお陰で自分が本当に描きたいものが見つけられましたし、苦労した過去が無駄ではなかったと前向きに考えられるようになりました」
最後に「雨森さんにとって漫画とは何ですか?」と質問したところ、印象的な回答が返って来たので、その言葉で締め括らせていただく。「私にとって、漫画は片想いのラブレターのようなもの。知らない人にずっと手を差し出している感覚です。恥ずかしさもありますが、色々な人に作品を手に取ってもらうのが今の私の夢です」

TEXT / KENJI NAKAYAMA ティアズマガジン119に収録

たいぼく おおきめログハウス

『台湾わ 雨と犬』
B6/66P/700円/旅行記
生年月日…7月16日
職業…無職
趣味…旅行、食事風景の録画
コミティア歴…コミティア104から
http://taibokuboku.tumblr.com/
ラフっぽいタッチの絵柄ながらも、目尻の表現や髪の毛のツヤ、キャラクター描写の細部にただならぬこだわりを感じる。可愛らしい表情を見せる少女かと思いきや、ゾクッとくるような官能的な色気を漂わせる。そんなフェティシズム溢れたマンガとイラスト、それがたいぼくさんの作品の特長だ。
中学生の頃より絵を描き始め、高校・大学は美術系の学科に進学。油絵を学びつつアート寄りの絵を描いてきた。転機となったのは、大学入学後に読んだウエダハジメ氏のマンガだった。その荒々しく独特な画風に凄まじいカルチャーショックを受けたという。「商業マンガでこんなにはっちゃけてて、こんなにカッコよくて良いんだ、って。殴られたような衝撃を受けました」この原体験をベースにしつつ、かっこいい構図と可愛い絵面を探求してきた結果、今の独特で魅力的な絵柄ができあがった。
その表現のインスピレーションは、他の作品からではなく、現実の人間から得ているそうだ。「人が好きなんでしょうね。怒ったところから苦しむところまで、その人の顔が全部見たい」と語る。電車の中や喫茶店で見かけた人物をスケッチし、自身の「フェチ」フィルターを通して描き、キャラクターとして確立させる。その手法は、ラフイラスト集『たいぼくログノート』で見ることができる。「人間の色々な表情を見たいので、知り合いの女の子の食事風景を録画させてもらったりもします。これは取材だと言って(笑)」
その一方で、定期的に楽しんでいるという趣味の旅行がインスピレーションとなることも。コミティア116で発表した『台湾わ 雨と犬』は、自身が台湾をほぼノープランで訪れた際のドタバタを臨場感たっぷりに描いた旅行記マンガだ。
現在はコミティアでの同人活動と並行して、商業マンガ家を目指し日々奮闘している。まだ自分の進む道を模索中だと話すが、内に秘める強い想いを聞くことができた。目指すのは、読んだ人の心を激しく揺さぶり、何度も読み返してもらえるようなマンガだという。「自分がウエダハジメにやられたように、読者を紙面の上からぶん殴りたい。マンガはその衝撃が反響して読み返されるものだと思うので」
たいぼくさんの稀有な才能が、今後どのような形で読者に襲いかかるのか。いつか繰り出される彼の強烈な一撃を、読者として喜んで食らおうではないか。

TEXT / KOUHEI SAKUMA ティアズマガジン119に収録

 
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