COMITIA112 ごあいさつ

広がるコミティア全国ネットワーク

今年もGWのコミティアにようこそ。例年もっとも規模の大きくなる5月ですが、今回は3年前の100回記念以来久々の5000サークルの大台に乗りました。毎年じわじわと参加サークル数が増えてくれるのはうれしいことです。
そして報告があります。昨年の北海道コミティアに続き、今年も新しい地方コミティア「みちのくコミティア~創作旅行~」が誕生します。第1回は7月19日に福島県郡山にて。準備期間もなく、いきなりのスタートですが、これは実は福島で長く同人イベントを運営するADV企画さんの、16年間続けてきた創作イベント「トラベラーズ」が新たな名前で再出発するもの。長年の実績があるので安心して参加してもらえると思います。本日の会場にも同名で参加して、申込を受付けています(スペース№X46b)。質問などありましたら、ぜひ遠慮なくお尋ねください。
昨年の北海道コミティア第1回が大盛況だったことを考えると、地方ではまだまだ創作を描いてみたい・読んでみたいという人が、きっかけの無いままにたくさん眠っているはず。そうした才能や欲求を掘り起すのもコミティアの役割でしょう。全国各地でこうした創作イベントが生まれようとする胎動を、こちらも可能な限りバックアップしてゆきたいと思います。
さてこの地方コミティアの動きに連動して、今年は昨年出版した『コミティア30thクロニクル』関連で新しい企画を始めます。5月以降の各地方コミティア会場で行う、『クロニクル』責任編集の私・中村公彦と掲載作家の方々との連続トークショーです。云わば『クロニクル』トークショー全国ツアー!? 大阪で水谷フーカさん、東京の書店で高野雀さん、新潟でBELNEさん、福島で小坂俊史さん、名古屋でおざわゆきさん、と各地方に縁のある方にゲストをお願いしました。どんな話が飛び出すか、登壇する私もドキドキしつつ楽しみです。
30周年記念として出版した『クロニクル』ですが、これまでの参加者がもう読んでくれたとしたら、これからは新しい読者に向けて届けてゆきたいと思います。これもコミティアの全国ネットワークが広がったからできることでしょう。新しい出会いに期待しています。
さて話題を変えて、今回の会場内企画でひとつ私が注目するものがあります。コミティアとは縁の深いマンガ家・こうの史代さんの名作「この世界の片隅に」(双葉社)のアニメ映画化応援企画・レイアウト原図展と片渕須直監督によるトークショーです。
打合せにスタジオに伺い、監督の製作にまつわる苦労話を聞いたり、精緻に描かれたレイアウト原図を見る内に、こうのさんの描いた主人公たちが生き生きと動き出す様が眼に浮かびました。そして短いデモムービーを見せてもらうと、それだけでじわっと涙ぐむくらい素晴らしい出来映えでした。監督の作品に込めた愛情と情熱がひしひしと伝わってきました。
そして何より注目するポイントは映画の製作資金をクラウドファンディングで集めていること。「クラウドファンディング」とは、特定のプロジェクトやベンチャーなどの資金調達のために、インターネットを利用し、多くの人々から寄付や投資を集めること。この場合はこうのさんの作品や片渕監督のファンが作品完成への期待を込めて支援するものです。
2000万円を目標に始めたプロジェクトは8日間で目標額を達成し 、サポーターは2000人を超え、まだまだ増え続けています。それだけこの映画化に対するファンの期待は大きいと言えるでしょう。とは言え、この金額は映画製作のやっとスタートラインに立てるレベル。この展示企画を見て、応援したくなった方はぜひサポーターになってもらいたいと思います。
さて、こうしたクラウドファンディングは昨今、商業誌や自主制作作品(同人誌)を問わず、広まっています。例えば今回の展示スペース№01で参加するプラチナフレンド企画室は、18年前に廃刊した『週刊少女フレンド』(講談社)の執筆作家たちが集い、この形で読者から資金を集め、新作を描いて同窓会本を作りました。読者も参加して作者の創作活動を支援できるという意味で有効な手段でしょう。
また、作者がその成果をWEB上だけでなく、実物を直接読者に届けたいと考えた時に、コミティアのような人が集まる場を利用するケースも増えています。こちらもそうした作家の自主活動は積極的に応援したいと考えているので、この流れを注視してゆきたいと思います。
最後になりましたが、本日は5052のサークル・個人の方が参加しています。表現にまつわる場は広がり、多様な関わり方ができるようになりました。それでも軸になるのはそこに生まれる作品であり、作品を介した描き手と読み手の出会いです。いつも言うことですが、今日という日にそんな素晴らしい出会いがあることを願っています。

2015年5月5日 コミティア実行委員会代表 中村公彦