COMITIA104 ごあいさつ

コミティアにおける「読者の役割」とはなんだろう?

「読者の役割」について、ここのところずっと考えています。
きっかけは、昨今話題のマンガ「重版出来!」(松田奈緒子/月刊スピリッツ連載中)でした。本作は新米マンガ編集者・黒沢心を中心に、マンガ家、編集者、営業部員、書店員らが「一冊のマンガを売る」ためにチームで奮戦する、熱血マンガ業界マンガですが、その連載本誌のコミックス発売予告記事のコピーにはこう書かれていました。
「マンガ家→編集者→営業→書店員→ゴールは読者(あなた)。」
これを読んでふと、ではバトンを受け取った読者(わたし)はどうしたらいいんだろう?と考えてしまったのです。
好きなマンガを読むのに理屈はいらない。誰が描いて、誰が出版して、誰が売ったか、なんていちいち気にする必要は無い。そんなことを考えていたら純粋に楽しめない。本来エンターティメントとはそういうものでしょう。
でも…と、そこでその作品の「向こう側」について考えずにいられない自分がいます。
マンガ家さんはこの話で何を伝えたかったのだろう。編集さんとはどんな侃々諤々の打合せをしたのだろう。デザイナーさんはどういう効果を狙って、この表紙をデザインしたのだろう。営業さんは読者にどうアピールしようと頭を悩ませたのだろう。書店員さんはどんな読者に届くようにPOPを描いたのだろう…。
一冊の本が自分の手元に届くまでに、様々なドラマがあって、そのバトンが自分に手渡されたのだ、と考えるとワクワクします。
世の中には誰にも読み切れないほどのマンガが、書店や同人誌即売会やネットに溢れ、その中からようやく自分のところに辿り着いたこの1冊のバトンを、逸らさずきちんと受け取れるか。そしてそのバトンを次に誰にリレーするのか…。
私にとっての読者とは「ゴール」ではなく、まだどこかに向けて走り続けねばならない「最終走者(アンカー)」です。

つい、そんなことを考えてしまうのは、このコミティアそのものが「読者の役割」を考えるところから出発しているからだと思います。
アマチュアでも面白いマンガを描きたいと思う人がたくさんいて、自分もそれをとても読みたくて、もっと他の読者にもこの面白さを伝えたくて、ではそれを自由に発表したり、教えあったりできる場があればいいなと思いました。
きっとその時、自分が受け取ったバトンがたくさん増えすぎて、それならみんなが集まってバトンを渡しあえる場所を作ればいいんだと考えたのでしょう。
それが、マンガが描けないマンガ好きで、マンガを読むことしかできない自分が、マンガに出来る唯一のことだったのです。
コミティアはそうして生まれました。

作品(バトン)を受け取って、読者は何を返すか。私はその答えに正解はないと思います。いや、逆に言うなら読者の数だけ答えがあると言うべきでしょうか。
何にせよ作品とは、読んだ後にどれだけ自分が変われるかに価値があります。すかっと笑って、気分が変わるか。ぼろぼろ泣いて、ぐっすり眠るか。もやもやと考え続けて、ずっと忘れられずにいたり。ふとした時にフラッシュバックで思い出すトラウマになったり。もしかしたら、その時に読んだその作品によって、人生が変わる人だっているかもしれません。
コミティアはそんな多様な作品が発表され、読む人の感情を刺激し、何かを返さずにはいられないような、作者から読者へ、読者から作者へ、それぞれの熱い気持ちがリレーされる場でありたいと願っています。

という訳で、そんなことをいろいろ考えさせてくれて、読みながら熱くなったり、じわっと涙腺が刺激されたりする「重版出来!」は素敵なマンガです。マンガが好きなあなたにぜひお薦めします。

最後になりましたが、本日は4700のサークル・個人の方が参加しています。一年ぶりのビッグサイト3ホール開催、今回もたくさんの描き手が参加してくれました。彼らの作品(バトン)を受け取ったあなたが何を返すのか。今日来られた方は、ぜひ少しだけそのことを意識してみてください。そこからきっと何かが始まると思うのです。

2013年5月5日 コミティア実行委員会代表 中村公彦

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